宇都宮市長選における民進党の"460億円"の嘘
LRT(ライトレールトランジット)=次世代型路面電車システム。
栃木県宇都宮市はこの導入を長年計画してきました。
ところが今月20日に投開票される宇都宮市長選において、対抗馬として出馬した民進党候補がこの事業計画に対し、「LRTは不要、460億円も市民の税金を使うな」と、LRTを唯一の選挙争点として謳いあげ、あまつさえその言葉に騙される市民が増えているとの話を耳にしました。
しかしこれは民進党お得意の情報の恣意的な引用でしかありません。それを簡単にですが説明したいと思います。
1.460億円という事業費について
まず宇都宮駅から工業団地までの公共交通整備が企業誘致の条件であったということを知っている人はどれだけいるでしょうか。
今回、LRT事業が頓挫した場合、この誘致した企業は宇都宮市からの撤退も視野に入れているという事実を。
そうなれば年間200億円もの税収が無くなるということを。
LRT事業費460億円の半分は国から助成金が出ます。
残り230億円を県と市で折半するわけですが、ここでもうひとつ。
企業誘致の際に行なわれた用地売却益が110億円ほどあり、当然、前述の誘致条件ありきで発生したお金であることからLRT事業のために使うべきものとして長年プールし続けられているものです。
230億円からこの110億円を引いて120億円。
これを県と市で折半するので市の負担は60億円ほどになります。
数年かけて借金として返済していき、返済額は年間10億円以下ぐらいとなります。ちなみに宇都宮市の年間予算は2000億円ほどです。
つまり2000億分の10億です。
対してLRT事業計画が頓挫した場合、企業の撤退ともなれば税収はこれから先、今現在から年間マイナス200億円となるわけです。もちろん企業の撤退は人の流出にも繋がることでしょう。
小学生にもわかる単純な計算です。
さて、どちらが宇都宮市にとって良いことでしょうか。
2.LRT反対派の言い分について
反対団体は「宇都宮市民はLRTが無くとも困らない」などと言います。まずこの市民の総意を勝手に語るやり口は沖縄のプロ市民などと同様なので注意です。現実には前述した通り工業団地への足を必要としている人たちがまず確実に存在しています。
LRTを直接的に必要とするのが一部の人間だけという話なら実際に運用されてみるまではその通りでしょう。
しかし、それはA地区で橋を必要としているのにその土地に関わりのないB地区の人間が自分たちには不要だと叫んでいるに過ぎません。ならばB地区でトンネルが必要とされたときにA地区の人間が自分たちには不要だと訴えたらどうなるでしょう。
公共事業とはすべからくそういう性質のものであり、全ての市民が等しく恩恵を得るものばかりでは成り立つものではありません。前述した企業誘致による税収アップがひいては市民へのサービス向上に繋がる、というのもまさにそれでしょう。
3.LRTの有用性への疑問について
反対団体は「バスで十分」「車の混雑緩和なら道路を新たに造ればいい」などと言います。
「バスを増やせばいい」との意見は混雑解消と矛盾していることに気づいていないのか。「乗り換えで高齢者に負担をかける」との意見は今現在のバスの乗り継ぎと何が違うというのか。「車からLRTに乗り換えるとアンケートに答えた人は少数」との話は同じくアンケートを取れば車からバスに乗り換えると答える人も少数ではないのか。「限定された路線なんかよりも小型のモビリティを」との意見は運転ができない高齢者のことを忘れていないか。
「一車線を占有されたら混雑が増す」との意見は車の走行量が現状のままならそうなるかもしれませんが、近年までにかなりの環状道路が造られており、用途によってそちらに車の流れが変わっていくのではなかろうか。「道路を新たに造ればいい」との意見は以前にもLRTが選挙の争点となった時があり、実際に道路が造られた過去がありますが、現状その道路は混雑緩和にはなんら寄与せずに現在に至っています。
「工事中は余計に混雑する」という意見については当たり前としか言いようがなく、長年、中央線の高架工事の不便に付き合った人間としては、完成した今、環境の変化による今までとは違う生活範囲の恩恵と便利さをあまねく享受しています。
バスはしょせん"点"の輸送であり、LRTの"線"の輸送とは質も量も比較になりません。宇都宮市の人口にあって街中に安定した大量輸送手段が無い現状は明らかに問題です。
若年層と高齢者を排除する閉鎖的な車社会を抜本的に変えるためのLRTに対し、反対意見はどれも場当たり的で他の反対意見との齟齬が目立つものばかりです。ただただ耳ざわりのいい言葉で別の思惑(バス会社の既得権益など)を覆い隠すものでしかないでしょう。
4.収支について
ちなみに「税金を使って赤字になったらどうする」という点においては、まず赤字にはならないということ。仮に赤字だったとして現在必要としている工業団地の人たちのために運行するべきものであること。特に企業が撤退する話があるならなおのことです。
例えば橋を架けた場合は有料道路でもない限りは維持費だけが毎年掛かるわけですが、それは赤字と呼ぶのでしょうか。
実は大幅な黒字になるのもまた問題で、そうなると国から助成金の返還請求が来るため返済額が増えてしまいます。維持できる程度にほどほどの黒字が市にとってはちょうどいいのだとか。
5.車社会からの脱却について
車にのみ依存する田舎特有のインフラ社会はいずれ衰退します。今現在、すでに高齢者が買い物に出るための足が無い地域が多数存在していると聞きます。反対派が言うようにバスを増やせというなら、そういった地域を網羅する路線を開拓すべきであり、そのための補助金なら市も考えてくれるのではないでしょうか。
私の住む街および近隣の市は大動脈である一本の電車路線を中心として、各駅から放射状に大手のバス路線が伸び、その隙間の地域を小型のコミュニティバスが複数走っています。
宇都宮市は駅を中心とした発展ができなかった街です。是非ともLRTを主幹とし、大小のバス路線で多くの地域をカバーする、車が無くとも住みやすい街作りを目指してほしい。LRTはこれから先の宇都宮市が北関東の大都会であり続けるための重要な最初の一手であると思います。
6.最後に
そもそも市政はLRTだけではありません。なのに争点をそのひとつにし、滞りなく市政を行なっている現市長を失脚させて政治の素人の民進党候補を市長の椅子に座らせる怖さを宇都宮市民はもう少しきちんと考えるべきです。民主党政権時代の悪夢をもう忘れてしまったのでしょうか。
民進党員は確実に投票に行くでしょう。現市長は強いからと自分一人が投票に行かなくても大丈夫だろうという油断は、先日の新潟知事選のような悲劇を再び生むことになります。
私の拙い話で「LRTだけが争点となった市長選問題」を捉え直してくれた方は周りの人々にも伝えて共に考えてほしいと思います。
宇都宮市政を守るのはあなた方の一票なのですから。
栃木県宇都宮市はこの導入を長年計画してきました。
ところが今月20日に投開票される宇都宮市長選において、対抗馬として出馬した民進党候補がこの事業計画に対し、「LRTは不要、460億円も市民の税金を使うな」と、LRTを唯一の選挙争点として謳いあげ、あまつさえその言葉に騙される市民が増えているとの話を耳にしました。
しかしこれは民進党お得意の情報の恣意的な引用でしかありません。それを簡単にですが説明したいと思います。
1.460億円という事業費について
まず宇都宮駅から工業団地までの公共交通整備が企業誘致の条件であったということを知っている人はどれだけいるでしょうか。
今回、LRT事業が頓挫した場合、この誘致した企業は宇都宮市からの撤退も視野に入れているという事実を。
そうなれば年間200億円もの税収が無くなるということを。
LRT事業費460億円の半分は国から助成金が出ます。
残り230億円を県と市で折半するわけですが、ここでもうひとつ。
企業誘致の際に行なわれた用地売却益が110億円ほどあり、当然、前述の誘致条件ありきで発生したお金であることからLRT事業のために使うべきものとして長年プールし続けられているものです。
230億円からこの110億円を引いて120億円。
これを県と市で折半するので市の負担は60億円ほどになります。
数年かけて借金として返済していき、返済額は年間10億円以下ぐらいとなります。ちなみに宇都宮市の年間予算は2000億円ほどです。
つまり2000億分の10億です。
対してLRT事業計画が頓挫した場合、企業の撤退ともなれば税収はこれから先、今現在から年間マイナス200億円となるわけです。もちろん企業の撤退は人の流出にも繋がることでしょう。
小学生にもわかる単純な計算です。
さて、どちらが宇都宮市にとって良いことでしょうか。
2.LRT反対派の言い分について
反対団体は「宇都宮市民はLRTが無くとも困らない」などと言います。まずこの市民の総意を勝手に語るやり口は沖縄のプロ市民などと同様なので注意です。現実には前述した通り工業団地への足を必要としている人たちがまず確実に存在しています。
LRTを直接的に必要とするのが一部の人間だけという話なら実際に運用されてみるまではその通りでしょう。
しかし、それはA地区で橋を必要としているのにその土地に関わりのないB地区の人間が自分たちには不要だと叫んでいるに過ぎません。ならばB地区でトンネルが必要とされたときにA地区の人間が自分たちには不要だと訴えたらどうなるでしょう。
公共事業とはすべからくそういう性質のものであり、全ての市民が等しく恩恵を得るものばかりでは成り立つものではありません。前述した企業誘致による税収アップがひいては市民へのサービス向上に繋がる、というのもまさにそれでしょう。
3.LRTの有用性への疑問について
反対団体は「バスで十分」「車の混雑緩和なら道路を新たに造ればいい」などと言います。
「バスを増やせばいい」との意見は混雑解消と矛盾していることに気づいていないのか。「乗り換えで高齢者に負担をかける」との意見は今現在のバスの乗り継ぎと何が違うというのか。「車からLRTに乗り換えるとアンケートに答えた人は少数」との話は同じくアンケートを取れば車からバスに乗り換えると答える人も少数ではないのか。「限定された路線なんかよりも小型のモビリティを」との意見は運転ができない高齢者のことを忘れていないか。
「一車線を占有されたら混雑が増す」との意見は車の走行量が現状のままならそうなるかもしれませんが、近年までにかなりの環状道路が造られており、用途によってそちらに車の流れが変わっていくのではなかろうか。「道路を新たに造ればいい」との意見は以前にもLRTが選挙の争点となった時があり、実際に道路が造られた過去がありますが、現状その道路は混雑緩和にはなんら寄与せずに現在に至っています。
「工事中は余計に混雑する」という意見については当たり前としか言いようがなく、長年、中央線の高架工事の不便に付き合った人間としては、完成した今、環境の変化による今までとは違う生活範囲の恩恵と便利さをあまねく享受しています。
バスはしょせん"点"の輸送であり、LRTの"線"の輸送とは質も量も比較になりません。宇都宮市の人口にあって街中に安定した大量輸送手段が無い現状は明らかに問題です。
若年層と高齢者を排除する閉鎖的な車社会を抜本的に変えるためのLRTに対し、反対意見はどれも場当たり的で他の反対意見との齟齬が目立つものばかりです。ただただ耳ざわりのいい言葉で別の思惑(バス会社の既得権益など)を覆い隠すものでしかないでしょう。
4.収支について
ちなみに「税金を使って赤字になったらどうする」という点においては、まず赤字にはならないということ。仮に赤字だったとして現在必要としている工業団地の人たちのために運行するべきものであること。特に企業が撤退する話があるならなおのことです。
例えば橋を架けた場合は有料道路でもない限りは維持費だけが毎年掛かるわけですが、それは赤字と呼ぶのでしょうか。
実は大幅な黒字になるのもまた問題で、そうなると国から助成金の返還請求が来るため返済額が増えてしまいます。維持できる程度にほどほどの黒字が市にとってはちょうどいいのだとか。
5.車社会からの脱却について
車にのみ依存する田舎特有のインフラ社会はいずれ衰退します。今現在、すでに高齢者が買い物に出るための足が無い地域が多数存在していると聞きます。反対派が言うようにバスを増やせというなら、そういった地域を網羅する路線を開拓すべきであり、そのための補助金なら市も考えてくれるのではないでしょうか。
私の住む街および近隣の市は大動脈である一本の電車路線を中心として、各駅から放射状に大手のバス路線が伸び、その隙間の地域を小型のコミュニティバスが複数走っています。
宇都宮市は駅を中心とした発展ができなかった街です。是非ともLRTを主幹とし、大小のバス路線で多くの地域をカバーする、車が無くとも住みやすい街作りを目指してほしい。LRTはこれから先の宇都宮市が北関東の大都会であり続けるための重要な最初の一手であると思います。
6.最後に
そもそも市政はLRTだけではありません。なのに争点をそのひとつにし、滞りなく市政を行なっている現市長を失脚させて政治の素人の民進党候補を市長の椅子に座らせる怖さを宇都宮市民はもう少しきちんと考えるべきです。民主党政権時代の悪夢をもう忘れてしまったのでしょうか。
民進党員は確実に投票に行くでしょう。現市長は強いからと自分一人が投票に行かなくても大丈夫だろうという油断は、先日の新潟知事選のような悲劇を再び生むことになります。
私の拙い話で「LRTだけが争点となった市長選問題」を捉え直してくれた方は周りの人々にも伝えて共に考えてほしいと思います。
宇都宮市政を守るのはあなた方の一票なのですから。
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