スウェプト・アウェイ

●スウェプト・アウェイ

監督/脚本:
  • ガイ・リッチー(『スナッチ』)
出演:
  • マドンナ(『エビータ』)
  • アドリアーノ・ジャンニーニ
  • ジーン・トリプルホーン
  • ブルース・グリーンウッド



ギリシャからイタリアへ向かうプライベートクルーズを楽しむアメリカ富裕層カップルたち。その中の1人、製薬会社社長トニーの妻・アンバーは貧相な船に不満を募らせる。傲慢な彼女はその不満を船員のジョゼッペに向けていった。
そんなある日、アンバーは強引にジョゼッペにボートを出させるが、大海原の真ん中でエンジンが故障。嵐に見舞われ無人島へと流れ着く。文明のない2人だけの世界では今までの主従関係が逆転した……。


テレビ番組欄の深夜にこのタイトルを発見。
「すうぇぷと・あうぇい……ん?何か聞いたことあるなぁ……え~と、原題は「Swept Away」……ああっ、2003年のゴールデンラズベリー賞受賞作やん!(マドンナが主演女優賞、ガイ・リッチーが監督賞を受賞!)」

これはチェックしないとね。
録画録画。鑑賞鑑賞。
……う~ん、酷いなコレ。
さすがラジー賞獲っただけのことはありますわ。



本作は1974年のイタリア映画『流されて…』(リナ・ウェルトミューラー監督)のリメイク。ちなみに主演のアドリアーノ・ジャンニーニはこのオリジナル版で同役を演じたジャンカルロ・ジャンニーニの息子だそうな。

オリジナル版は未見ですが、70年代のイタリア映画が醸し出す雰囲気は想像に難くないので、きっとこの題材を面白く料理しているのでしょう。

しかし、このリメイク版はあらすじだけを追い掛けて、登場人物らの内面になど一切踏み込んでいない。マドンナの演技の酷さも拍車をかけます。心の機微を表現できず、どうして主演に?

答え:旦那が監督だから

その旦那の演出も酷い。そもそもガイ・リッチーの演出ってサバサバして乾いたところが持ち味(『スナッチ』観てないけど、そういう評価でしょ?)なのだから、この題材とは相性最悪でしょうに。

序盤は「イタリア映画もどき」を作ろうと苦心していた節も見受けられますが、結局は単にトゲトゲしくなるばかり。中盤を過ぎてからは吹っ切ったかのように「マドンナのプロモ映像」などを披露。主従関係逆転からの心の変化を描く気はまったく無くなってます。

夫婦のプライベートフィルムは2人だけでやってくれっ。

人妻アンバーには「人を虐げながらも魅力的に見えてしまう妖艶さ」を合わせ持ってもらわないとジョゼッペにも感情移入できません。あれでは単なる女性監禁犯です。その辺のモラルの揺らぎを描いてこその物語のはずが、その状況を上っ面だけなぞってお終いです。



オチはオリジナル版とはテイストが変わっているらしく、やはり人間性に迫ることを放棄した大甘さ。まあメロドラマですね。

でも、メロドラマとしてなら演出含め十分及第点の終わり方です。このラストのテイストで全編を作っていたらもう少し評価も変わっていたかもしれませんね……って、それが出来ればこんなことにはなってないか。

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