キング・コング

●キング・コング

監督/脚本/製作:
  • ピーター・ジャクソン(『ロード・オブ・ザ・リング』)
出演:
  • ナオミ・ワッツ(『ザ・リング』)
  • ジャック・ブラック(『スクール・オブ・ロック』)
  • エイドリアン・ブロディ(『戦場のピアニスト』)
  • トーマス・クレッチマン(『スターリングラード』)
  • アンディ・サーキス(『ロード・オブ・ザ・リング』)



相変わらず長い長い。
ピーター・ジャクソンは映画の作り方を忘れたのか?
ただ、飽きはしなかったです。
でも、それは映画としてではなく映像で引っ張られた感じ。

物語は3部構成。
仕事を失った売れない女優アンが、詐欺まがいに賭けにでる映画監督デナムに半分騙され、幻の島《髑髏島》への撮影旅行に赴く「序章」。アンが生け贄としてコングに連れ去られ、船員らが救出に奔走する「接触編」。ニューヨークに連れ帰ったコングが大暴れする「発動編」。

思わず私の眼には髑髏島に辿り着いた画面に「To be continued」の文字が見えましたよ(笑)。



まず序盤が長い。アンを、その境遇から何から描写したかったのは分かるが、いかんせんその行動を追うだけで内面を描けていなければ無駄。島に渡った後も、コングと心を通わせていく過程は見せているが内面を感じさせはしない。バブルな撮り方に馴れちゃったのかいピーター。

アンが描けていないことで、中盤、得体の知れない怪物=コングに連れ去られたアンを船員全員が助けにいこうとする姿も実に嘘くさい(今現在の「アメリカの正義」っぽい)。それを成立させるならアンは長い船旅の中で船員たちのアイドルになっていなければならない。しかし描写といえばちょっとダンスに興じたのみ。『ラピュタ』のシータを見習いましょう。

話は戻るけどコング初登場シーンが雑でガッカリ。「生け贄となっているアンに迫る黒い影。その巨大な手がアンを掴み島の奥に消える」……こうきたら、次にコングの全身が初めて画面に現れる時はアン絡みのドラマでババーーン!とケレン味溢れる登場をするんだろうな、と思いきや、アンを振り回しながらヒョッコリ登場。

だったら、生け贄のアンの前に現れる時に全身映そうよ。『ロード~』でもそうだったけど、演出に溜めが無い。『ロード~』は壮大な物語という側面がそうした演出をフォローしてくれたけど、本作は短期決戦なんだからそうもいかない。

それにしてもキングコングがただの巨大ゴリラだったり『ナルニア国物語』のアスランがただのライオンだったりするアメリカ人のセンスのなさはどうにもならんのだろうか? 異世界の生物というアプローチにリアリティを持たせる技術(金)はあるくせに勿体ない。



クライマックスもこれといったポイントが無いまま周知のラストへ。本作は33年版『キングコング』に対するピーターの愛の映像化であって映画ではない。ピーターはスクリーンにコングを存在させたかっただけなのだ。映画としての演出などしていない。もしあなたが涙を流したとしたらそれはドキュメントフィルムを見た時と同じ涙だ。

残念ながら私は虚構の存在が辿る悲劇だけでは涙は流れませんでした。やはり演出してくれないとね。

とはいえ本当に3時間8分を飽きなかったのも事実。探検隊が撮影してきたフィルムを観る感覚。大金かけて作った川口探検隊か。観て損はないです。イベントムービーとして大画面必須。

それにしても皆、巨大生物の脇をあっさり通り抜け過ぎ!(笑)

★★★

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