茄子 アンダルシアの夏

●茄子 アンダルシアの夏

監督/脚本/作画監督:
  • 高坂希太郎(『千と千尋の神隠し』作画監督)
声の出演:
  • 大泉洋(『パコダテ人』)
  • 筧利夫(『踊る大捜査線』)
  • 小池栄子(『サトラレ(TV)』)



「俺は遠くへ行きたいんだ」

世界3大自転車レースのひとつ、スペインを舞台にした《ブエルタ・ア・エスパーニャ》。今日はアンダルシア地方でレースが繰り広げられていた。その中を走るレーサーの1人、ペペ。この日のレースコースは彼が捨てた地元の町が舞台だった。そして奇しくも同じ日に彼の兄と彼の元恋人・カルメンとの結婚式が行われていた。彼は思い出の土地を自らの足で走り越えようとする……。


本作は、元々、OVA企画だったものが劇場にかかることになったもの。画面がテレビサイズだったり、上映時間47分という短さが物語ってますが、でも、これがOVAでひっそりとリリースされてたとしたら勿体ない話でしたよ。

確かに劇場にかかることになったためのブラッシュアップもあったとは思いますが、作画もそうですけど物語の構築のクオリティは劇場作品ですよ(OVAをどうこう言ってるわけではないですよ、念のため)。

自転車レースをこれほどまでに描くアニメ作品なんてこれから出るかどうか(だって、ちょっと実写至上主義人間がいたら「何故アニメで作る必要があるのか?」などと言われかねないほどに、アニメで自転車を動かす手間は想像しただけで気が遠くなりそうですから)。

まあ、海外だったらまず実写で映像化でしょうけどね。日本人が映画を作るとなると、このクオリティを出すにはやはりアニメしかないのも事実ですし。

でも、やはり私はアニメだからこその「嘘のつき方」が好きです。実写とは違うテンポ、間、芝居……そんなアニメというものが好きですからね。本作が感じさせてくれた肌触りはアニメだからこそ味わえたのだと思いますから。



本作の絵柄はジブリっぽいと当初から言われてましたが、監督(兼作画監督)はジブリ作品を多数手掛けているので、それはそれで納得なんですけど、私はどちらかといえば『マスター・キートン』っぽいなぁと思っていたら、やはりキャラデ&作監をしてました(本人の弁では宮崎さんと浦沢さんの絵の中間にいるとのこと)。

声に関しては、小池栄子はいい感じでしたね(一番のセリフはやはりCMにも使われていた「好きよ、ペペ」でしたが)。筧利夫も特に特徴があるキャラでもないですし悪くなかったと思います。

個人的には大泉洋! 名前を見かけると、つい「おぉ、大泉洋だ」と思ってしまうんですよ、私。『パパパパパフィー』で、パフィーの罰ゲームとして零下の室内で大泉洋のワンマンショーを見るというのがあって。その時に唄ったのが「すきま風」だったのがもうツボでツボで。それ以来、目にする度に気になっていた彼がなんと主役ですから、立派になったなぁという気分で(笑)。



ま、とにかく時間は短いですが、通常1時間30分作品の密度を半分に濃縮したがごとし。それに、これからビデオ等で観る人にとってはOVAと変わらないわけで時間はそれなりですし。なんて贅沢なOVAだこと。

ありきたりな言い回しになりますけど、ジブリ作品好き(の大人)なら楽しめると思います。個人的には『マスター・キートン』の日常話好きな人にお薦めかと。是非。

★★★★

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