二重スパイ

●二重スパイ

監督:
  • キム・ヒョンジョン
出演:
  • ハン・ソッキュ(『シュリ』『カル』)
  • コ・ソヨン(『エンジェル・スノー』)



日本では本作を『シュリ』『JSA』に続く韓国3部作みたいな宣伝で括っていますが、確かに南北問題をテーマにした作品としてはここに極まった感がありますね。

南の視点で北を敵国として描き、それでも人間同士は北も南も無く理解し合えるはずだ、という『シュリ』。
軍事境界線を舞台にして北と南の軍人の友情を同じ目線で捉えた『JSA』。
そして本作では、北のスパイの視点で南を敵国として描くことで南北分断の空虚さを反面教師的に感じさせています。



映画の出来としてはまあまあ。
決して楽しめなかったわけではないのですが、やはりアクションの『シュリ』、友情・サスペンスの『JSA』とは違い、本作はスパイ活動を通して南北分断の歴史そのものを主題にしているので、文化的・歴史的実感を持てない日本人としては正当に評価しにくい部分があるのかもしれません。

ほんの20年前なのに極度の緊張状態だった朝鮮半島。1980年当時は韓国も北朝鮮へスパイを送っていたという事実。北からの亡命者への拷問。監視。朝鮮半島の歴史とは南が善玉で北が悪玉などという単純な構図ではないということをしっかりと理解出来る作品なのは確かです。

登場人物らの心の機微を観る者に感じさせる演出は、もの悲しくも尚のこと心に染みてきます。夕方に国旗を降ろす「国旗下降式」の間は敬礼をしなければならない韓国にあって、主人公はそれを避けようとしながらも、隣りに立つ友人との交流の心地良さに身を置きつつ何を感じていたのか……。

ラストは王道……というよりもありきたりの域で、もうちょっと裏切って欲しかったところです。まあ、時代的にはアレしかないのも分かりますけどね。



観て損は無いと思います。別に3部作ではないですが『シュリ』『JSA』と合わせて観るのもいいかもしれませんね。

★★★

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