ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
●ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
監督:
壮大な物語の完結編。
今年のアカデミー賞作品賞ほか11部門受賞作。
多分、多くの観客がそうであったと思いますが、もう、サムに感情移入して観ちゃいましたよ。フロド、しっかりせいや、と(指輪の魔力ってのがどうにも実感しにくいため、指輪の囁きにフラフラするフラドがあまりにもじれったく感じてしまうのが本作最大の難点かも)。
最後の最後で指輪の囁きに負けるフロドは主役としてはあまりにも脆い。冒険の果てに勇者足り得るよう成長するのが映画的であるのに対し、その姿は物語の主役としては本来致命的ですらあります。
しかし、誘惑、疑心、欲望……そんな弱い存在こそが人間の姿そのものなんですよね。だからこそ、その中でもがき苦しみながらも、1人では不可能なことでも仲間同士で支えあうことで乗り越えられるのだと本作は語っているわけですな。
ボリューム的にも前作以上で完結編としてしっかり満足出来ました。とはいえ重箱の隅も少々。
目立ったところでは、人間の男には倒せない《魔王》は、きっと女性(=ローハンの姫)に倒されるだろうとバレバレなのに特に捻りがなかったのは残念。長らく引っ張った敵キャラの割に映像としてもあっさり倒されてる風にしか見えずもったいない。
か弱き者が倒すというコンセプトは良いので「人間の男の剣では切られないと油断している魔王は、簡単にその者の剣を身に受ける。しかし、剣は魔王の体にめり込む。驚愕する魔王。その者の兜が脱げると中身はローハンの姫。慌てた魔王は必死に抵抗。もちろん力は魔王の方が圧倒的に上なため姫の体はボロボロに」といった感じで、魔王それ自体は圧倒的な存在であって欲しかったですね。その上で「姫が死にそうになるギリギリのところで突き上げた剣が魔王の胸を貫く」ってな決まり方をすればOKだったかと。
巨大象なんかも弓矢数本で倒れるなんてイマイチ戦闘が軽く感じがちに。今でいう重戦車並の存在なんですから、もっと「如何にして倒すか?」で趣向を凝らしていただきたかったかな?
ま、だからといってこうした点を微にいり細にいり描写されて、アレ以上長くなったらなったで困るんですが(笑)。
ラスト、冒険が終わって、新たなる王の戴冠式の場で盛り上がり、そのままエンドクレジット……かと思いきや、その後、ホビットの村に帰った4人のその後が20分以上もかけて描かれるエピローグの演出に関して「長すぎ」「想像させてほしかった」といった意見もあるようですが本当にそうですか? 確かに少々冗長にも感じましたが、ただ、冒険を終えた自分が以前の自分に戻れないもどかしさ、寂しさもこの作品のテーマのひとつとすれば必要な描写であったと言えるでしょう。
そして、それと同時にそうしたフロドを見送り自分の日常へと戻っていったサムによって、彼の目線で本作を観ていた私などは、彼と共に日常に帰ることで、今までの旅路をまさに当事者の気分で顧みることが出来るという効果もありました。
これほどの完成度でファンタジー世界が構築された奇跡。ただの映像バブルに終わらない中身はピーター・ジャクソンの手腕か。これを観ずしてファンタジーを語るなかれ、ですね。
監督:
- ピーター・ジャクソン(『さまよう魂たち』)
- イライジャ・ウッド(『パラサイト』)
- ヴィゴ・モーテンセン(『ダイヤルM』)
- オーランド・ブルーム(『ブラックホーク・ダウン』)
- イアン・マッケラン(『ゴールデン・ボーイ』)
- クリストファー・リー(『吸血鬼ドラキュラ』)
壮大な物語の完結編。
今年のアカデミー賞作品賞ほか11部門受賞作。
多分、多くの観客がそうであったと思いますが、もう、サムに感情移入して観ちゃいましたよ。フロド、しっかりせいや、と(指輪の魔力ってのがどうにも実感しにくいため、指輪の囁きにフラフラするフラドがあまりにもじれったく感じてしまうのが本作最大の難点かも)。
最後の最後で指輪の囁きに負けるフロドは主役としてはあまりにも脆い。冒険の果てに勇者足り得るよう成長するのが映画的であるのに対し、その姿は物語の主役としては本来致命的ですらあります。
しかし、誘惑、疑心、欲望……そんな弱い存在こそが人間の姿そのものなんですよね。だからこそ、その中でもがき苦しみながらも、1人では不可能なことでも仲間同士で支えあうことで乗り越えられるのだと本作は語っているわけですな。
ボリューム的にも前作以上で完結編としてしっかり満足出来ました。とはいえ重箱の隅も少々。
目立ったところでは、人間の男には倒せない《魔王》は、きっと女性(=ローハンの姫)に倒されるだろうとバレバレなのに特に捻りがなかったのは残念。長らく引っ張った敵キャラの割に映像としてもあっさり倒されてる風にしか見えずもったいない。
か弱き者が倒すというコンセプトは良いので「人間の男の剣では切られないと油断している魔王は、簡単にその者の剣を身に受ける。しかし、剣は魔王の体にめり込む。驚愕する魔王。その者の兜が脱げると中身はローハンの姫。慌てた魔王は必死に抵抗。もちろん力は魔王の方が圧倒的に上なため姫の体はボロボロに」といった感じで、魔王それ自体は圧倒的な存在であって欲しかったですね。その上で「姫が死にそうになるギリギリのところで突き上げた剣が魔王の胸を貫く」ってな決まり方をすればOKだったかと。
巨大象なんかも弓矢数本で倒れるなんてイマイチ戦闘が軽く感じがちに。今でいう重戦車並の存在なんですから、もっと「如何にして倒すか?」で趣向を凝らしていただきたかったかな?
ま、だからといってこうした点を微にいり細にいり描写されて、アレ以上長くなったらなったで困るんですが(笑)。
ラスト、冒険が終わって、新たなる王の戴冠式の場で盛り上がり、そのままエンドクレジット……かと思いきや、その後、ホビットの村に帰った4人のその後が20分以上もかけて描かれるエピローグの演出に関して「長すぎ」「想像させてほしかった」といった意見もあるようですが本当にそうですか? 確かに少々冗長にも感じましたが、ただ、冒険を終えた自分が以前の自分に戻れないもどかしさ、寂しさもこの作品のテーマのひとつとすれば必要な描写であったと言えるでしょう。
そして、それと同時にそうしたフロドを見送り自分の日常へと戻っていったサムによって、彼の目線で本作を観ていた私などは、彼と共に日常に帰ることで、今までの旅路をまさに当事者の気分で顧みることが出来るという効果もありました。
これほどの完成度でファンタジー世界が構築された奇跡。ただの映像バブルに終わらない中身はピーター・ジャクソンの手腕か。これを観ずしてファンタジーを語るなかれ、ですね。
★★★★
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